腰痛疾患で最も多いのは椎間板ヘルニアです。
20〜40歳代に好発する病気で、腰痛、下肢痛、下肢のしびれ・筋力低下などの症状を伴います。
その治療は、薬物療法、運動療法、神経ブロック、外科的手術、椎間板治療など多種多様です。
ここでは腰部椎間板ヘルニアの各治療のメリット・デメリットに関してご紹介します。
椎間板ヘルニアの治療
腰椎椎間板ヘルニアの治療は、大きく保存療法(薬物療法、運動療法など)と手術に分けることができます。
保存療法
椎間板ヘルニアと診断されたら、多くの場合はまず、保存療法が行われます。
薬物療法
薬物療法では炎症や痛みを抑える目的で、非ステロイド性消炎鎮痛剤(ロキソニンやボルタレンなど)、筋弛緩剤、オピオイド鎮痛薬(モルヒネなど)、神経性疼痛緩和薬などを使用します。
・メリット:
痛みなどの症状を和らぐことができます。
・デメリット:
ヘルニアがなくなり症状が消失するところまで薬物療法を継続しますので、長期間にて薬を服用しなければいけません。
腎機能、肝機能障害などの疾患があると、薬物療法を行えない場合があります。 眠き、めまいなどの副作用の症状があります。また、特にオピオイド鎮痛薬を多用することで薬物依存をおこす恐れがあります。
運動療法
腰痛になった場合は安静にすることがありますが、安静の期間が長くなると腰痛が長引くことがあります。そのため、安静をせずに、ストレッチなどのリハビリを行うことで腰痛の改善を図る場合があります。
・メリット:
筋肉を鍛えることにより、痛みなどの症状を和らぐことができます。
・デメリット:
正しくない方法、また無理をしての運動などは反対に腰痛を悪化する恐れがあります。
神経ブロック
神経ブロックは、薬物療法で効果がなかった場合に行います。
・メリット:
注射ですので、切開をせず身体への負担は軽く済みます。
・デメリット:
脊柱管狭窄症から椎間板ヘルニアが併発している場合、また患者が高齢の場合は、効果が出ない可能性があります。
長期間ブロック注射を行うことで、神経を傷つけてしまう場合もあります。
上記のような保存療法は基本的に、初期の椎間板ヘルニアに効果的といえます。
数か月間保存療法を行っても症状が消失しない場合、外科的治療が提案されます。
また、発症初期であっても、下肢の著明な筋力低下・感覚低下、膀胱・直腸障害などの症状があれば、手術となることがあります。
手術
腰椎椎間板ヘルニアの手術は医療機関によって異なっています。
ここではよく行われる手術方法について述べます。
LOVE法
椎間板ヘルニアの手術として、過去から一般的に行われてきた手術です。
全身麻酔の外科手術で背中を5cm~10cm程切開し、目視下にて脊椎の周辺にある神経を避け、靭帯や椎弓などの一部を削ったり、ヘルニア部分を切除する外科手術です。
・メリット:
中~重度の椎間板ヘルニアに対応できます。
目視下の手術にて病変の見落としが少ないです。
健康保険が適応されます。
・デメリット:
切開の範囲が広がるため、体の負担が大きく、入院期間が2~3週間と長くなります。
内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(MED法)
椎間板ヘルニアの中~重度に適応される手術です。
全身麻酔にてうつ伏せとなり、背部を16mm程切開し、外筒管と内視鏡を挿入して、内視鏡にて突出したヘルニア部分を確認しながら切除します。
・メリット:
外科手術としては1時間程で比較的に短い手術時間で行われます。
筋肉の剥離が少なくてすみ、術後の痛みも小さいです。
健康保険が適応されます。
・デメリット:
術後の傷跡は16mmとやや大きいです。
入院期間は1~2週間程かかります。
手術の技術も熟練を要しますので、専門的な病院でないと手術を受けることができません。
経皮的内視鏡ヘルニア摘出術(PELD法)
椎間板ヘルニアのサイズが大きめで、疼痛もかなり強いと感じられる場合はPELD手術が行われます。
局所麻酔で、背中から操作管と呼ばれる管を挿入、その管から内視鏡を通してヘルニア部分を確認しながら摘出します。
・メリット:
術後の傷跡は6~7㎜と小さく目立ちません。
切開部分が小さく、術後の痛みが小さいです。
健康保険が適応されます。
・デメリット:
椎間が狭い場合や脊柱管狭窄症、すべり症を合併している場合はPELD法を行うのが難しいです。
経皮的レーザー椎間板髄核減圧術(PLDD)
局所麻酔にて、背中から患部の椎間板ヘルニアの部分に針を刺し、刺した針の経路にレーザーファイバーを通し、椎間板の中にある髄核をレーザーで焼くことで、神経の圧迫を軽減させ、痛みや痺れを改善させます。
・メリット:
椎間板ヘルニアだけでなく、非特異的腰痛に対しても効果があります。
MED法やLOVE法より、患者様への身体の負担が少ないです。
施術時間も15分程度なので、日帰りで治療が受けられます。
・デメリット:
すべての症例の椎間板ヘルニアに適応されません。
健康保険適応外です。
経皮的オゾン椎間板減圧術(PODD)
通常の保存治療では効果がなく、外科手術までを必要としない軽度のヘルニアに適応されます。
局所麻酔にて背中より患部の椎間板ヘルニアへ針を刺し、刺した針の先端よりオゾンと酸素の混合ガスを注入します。オゾン酸化により椎間板ヘルニアの容量が縮小し、神経への圧迫が軽減されます。
患部の消炎効果があるため、レーザー治療(PLDD)が適応されない患者様でも治療を受けることが可能です。
・メリット:
手術の時間が短く、術後の傷跡も小さいです。
副作用や合併症のリスクが少ないです。
日帰りで治療が受けられます。
PLDDよりさらに低侵襲な手術で、レーザーの熱で稀に起こる椎間板炎などのリスクもありません。
・デメリット:
全てのヘルニアに対して有効ではありません。
疼痛の緩和が弱く、複数回施術が必要な場合があります。
健康保険適応外です。
ハイブリッドレーザー治療
PLDDとオゾンのハイブリッド手術では、髄核が飛び出して圧力がかかっている根本的な原因を取り除き、炎症を起こしている部分をオゾンにより直接的に抑えるという効果があります。
・メリット:
手術の時間が短く、術後の傷跡も小さいです。
ヘルニアの消失と炎症に対する治療が同時に行えますので、PLDDやPODDよりも効果があります。
・デメリット:
全てのヘルニアに対して有効ではありません。
健康保険適応外です。
セルゲル法(椎間板修復インプラントゲル治療術)
近年研究・開発されてきた先進治療方法の一つであり、エビデンスがしっかりしている治療法では最も新しい治療法です。
椎間板ヘルニアの根本原因である椎間板の修復が可能です。
椎間板のボリュームが減少することがなく、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。
【セルゲル治療のイメージ】
・メリット:
他の治療法では不可能であった「椎間板の修復」が可能なため、根治的治療になりえます。
椎間板ヘルニアだけでなく、幅広い疾患に対して適用できます。
日帰りで治療できます。
外科手術後に痛みがとれなかった方や、再発してしまった場合でも治療を受けることができます。
80歳以上の高齢者でも治療を受けることができます。
・デメリット:
椎間板が潰れてほとんどなくなってしまっているような場合は治療適用外です。
自由診療のため治療費が高額です。
椎間板ヘルニアと診断されて痛みのある方、脊椎の手術を避けたいという方、ヘルニアが再発したという方は、
是非一度当院で診察を受けることをご検討ください。