治療症例紹介・コラム

Colum 椎間板ヘルニアの先進医療

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脊椎疾患は椎間板ヘルニアが最も多い病気と言われています。

従来は保存療法と外科的手術で対処されてきましたが、近年は様々な先進医療が利用できるようになってきています。

今回は椎間板ヘルニアの先進医療に関して解説します。

椎間板ヘルニアとは

椎間板は、中にある髄核と、それを取り囲むような線維輪という組織により形成されています。

遺伝的要因、加齢、日常生活での負担などにより、線維輪に亀裂が生じ、髄核が外に飛び出して、椎間板が損傷してしまいます。このような状態は、椎間板ヘルニアといいます。

腰部椎間板ヘルニアの場合は、腰痛、臀部や足の痛み・しびれなどの症状が発生します。神経が強く圧迫されたら、尿や便が出にくい、漏れてしまうという症状が出ることもあります。

椎間板ヘルニアの先進医療

近年は、椎間板ヘルニアに対して様々な治療法が行われています。

先進医療とは、最先端の技術を用いて行われる治療です。現在は先進医療を受けられる医療機関が少なく、ほとんどは保険が適応されない自費診療となっています。

経皮的レーザー椎間板髄核減圧術(PLDD)

最も広く知られている椎間板ヘルニアの治療です。ただし、すべての症例の椎間板ヘルニアに適応されません。

局所麻酔で背中から患部の椎間板ヘルニアの部分に針を刺し、刺した針の経路にレーザーファイバーを通し、椎間板の中にある髄核をレーザーで焼くことで髄核に空洞ができ椎間板が収縮します。施術時間が短く、入院が必要ありません。

経皮的オゾン椎間板減圧術(PODD)

PLDDより低侵襲な治療で、レーザーの熱で稀に起こる椎間板炎などのリスクもありません。

局所麻酔にて背中より患部の椎間板ヘルニアへ針を刺し、刺した針の先端よりオゾンと酸素の混合ガスを注入して、椎間板ヘルニアの容量が縮小し、神経への圧迫が軽減されます。

基本的には日帰りで治療が受けられますが、医療機関によっては複数回施術が必要な場合もあります。

ハイブリッドレーザー治療

ハイブリッドレーザー治療はPLDDとPODDのメリットを組み合わせた治療です。ヘルニアの消失と炎症に対する治療が同時に行えますので、PLDDやPODDより効果的です。

局所麻酔にて、レーザーで飛び出しているヘルニアを収縮させ、オゾンを注入して神経根炎を抑えます。

椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)

近年知られるようになった治療です。

椎間板内酵素注入療法は、椎間板内に酵素を含んだ薬剤を注入することで、椎間板の組成を変化させてヘルニアを消失させます。通常は1~2日の入院が必要です。

椎間板内酵素注入療法は一生に一度のみであり、再治療ができません。

椎間板再生治療:PRP療法、幹細胞治療

最近はPRP療法や幹細胞治療がよく話題になっていますが、この二つの療法は椎間板修復を目的とするものです。

PRP療法は、事前に採血したPRP(多血小板)を局所麻酔にて椎間板の線維輪内に注入して、亀裂部を自然修復します。

幹細胞治療も同様に、事前に採血した幹細胞を培養させて、局所麻酔下で椎間板に注入します。それで椎間板が修復されて痛みが緩和されます。

治療自体(椎間板への注入)は日帰りで可能ですが、治療予定日の数日前には採血が必要で、通院は少なくとも2回が必要です。

セルゲル法

外科的手術で痛み・しびれの症状が軽減されますが、椎間板の亀裂が修復されませんので、椎間板ヘルニアの再発もあります。

当院では他の治療法では不可能であった「椎間板の修復」ができる治療―セルゲル法を行っております。

近年研究・開発されてきた先進治療方法の一つであり、エビデンスがしっかりしている治療法では最も新しい治療法です。

損傷している椎間板に亀裂を埋める薬剤を注射して、それがゲル状になってひび割れを補綴するため、根治的治療になりえます。椎間板のボリュームが減少せず、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。

また、他の治療方法とは違って、椎間板が修復できているかどうか、治療後のCTやレントゲン等で確認できます。

セルゲル法は入院が必要なく、日帰りで可能な治療です。椎間板ヘルニアだけでなく、椎間板損傷に起因する幅広い疾患に対して適用でき、また外科手術後に痛みがとれなかった方や、再発してしまった場合でも、80歳以上の高齢者でも治療を受けることができます。

椎間板ヘルニアの先進医療:まとめ

 セルゲル法ヘルニコアPLDDPODDハイブリッドレーザー治療PRP療法幹細胞治療
椎間板の修復××××
椎間板の温存
麻酔局所麻酔局所麻酔局所麻酔局所麻酔局所麻酔局所麻酔局所麻酔
治療時間15分程度10分程度15分程度15分程度25分程度30分程度60分程度
1㎜以下1㎜以下1㎜以下1㎜以下1㎜以下1㎜以下1㎜以下
入院期間日帰り1~2日日帰り日帰り日帰り日帰り (採血と治療は別日で通院が2回必要)日帰り (採血と治療は別日で通院が2回必要)
保険適応自由診療保険診療自由診療自由診療自由診療自由診療自由診療
日常生活への復帰翌日退院後翌日翌日翌日翌日翌日
再発なしありありありありありあり

この記事の執筆者

整形外科医 簑輪 忠明

所属学会・資格
 日本腰痛学会
 日本内視鏡外科学会
 日本医師会認定産業医
 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
 セルゲル法 認定医
 オゾン治療 認定医
 フローレンス法 認定医