脊椎疾患では最も多いものと聞かれた場合、椎間板ヘルニアと答える方が多いでしょう。
今回は椎間板ヘルニアについてご説明します。
椎間板ヘルニアとは?
椎体と椎体の間には椎間板が存在しています。椎間板は中央にゼラチン状の髄核があり、髄核を取り囲むようにコラーゲンを豊富に含んだ線維輪があります。
線維輪に亀裂が生じ、髄核が外に飛び出した状態は、椎間板ヘルニアといいます。
椎間板ヘルニアはどのように発生するか?
椎間板に問題がなければ、激しい運動をしても、エネルギーがクッションである椎間板で吸収されるため、周囲の骨や靭帯にも影響はほとんど生じません。
子供には慢性腰痛や神経障害が出現しないのが、椎間板のクッション機能が正常であるからです。
しかし、早ければ16歳ぐらいの頃から椎間板が損傷し始めます。
線維輪に亀裂が生じると、中の髄核が急激に脱出して、ヘルニアが生じます。髄核がゆっくりと脱出すると、ヘルニアは目立ちませんが、髄核の量が減少し、椎間板機能の低下を引き起こします。
最終的にクッション機能の低下により、脊椎の負担が増え、脊椎や靭帯の変形が始まり、椎間関節炎や靭帯骨化を引き起こし、脊柱管狭窄症や椎間孔狭窄症などを併発します。
椎間板の損傷から始まり、様々な脊椎の病気が進行していくのです。
そのため、根本的な原因である、椎間板を修復する治療が重要となります。
椎間板ヘルニアの痛み
椎間板ヘルニアがあると、腰やお尻の痛み、足の痛み・しびれなどの症状が出ます。
ただし、MRI検査で重度のヘルニアと診断されても痛みがない場合や、軽度のヘルニアでも強い痛みが出てしまう場合があります。
最近の研究では、椎間板ヘルニアによる痛みが脱出した髄核による物理的な神経圧迫ではなく、脱出した新鮮な髄核による炎症が原因であるとわかってきました。
その炎症は一定期間(数か月)で自然消失することも判明しています。
ヘルニアでは、炎症後に自然に吸収されることもあれば、残存することもあります。残存したヘルニアは画像検査で重度のヘルニアとして見えても、炎症後であるため、症状はありません。
数か月以上痛みが持続している場合は、常に新しい髄核が漏れ続けていることを意味しています。痛みが改善された場合は、髄核の漏れが止まった状態を意味します。
これは椎間板ヘルニアという病気を理解するために、非常に大切です。
椎間板ヘルニアの治療
保存療法
保存療法は薬物療法、運動療法などがあります。
薬物療法
椎間板ヘルニアと診断されたら、炎症や痛みを抑える目的で、ロキソニンやボルタレンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、オピオイド鎮痛薬、神経性疼痛緩和薬などを使用します。ヘルニアがなくなり症状が消失されるまで、長期間にて薬を服用しなければいけません。
運動療法
腰痛になって安静の期間が長くなると、反対に腰痛が長引くことがあります。そのため、安静をせずに、ストレッチなどのリハビリを行うことで腰痛の改善を図る場合があります。
外科的手術
痛みがでてから、保存療法を行っても症状がとれない場合は手術適応となるとされています。
外科的手術では漏れ出た髄核(ヘルニア部分)を摘出して痛みや炎症を消失させます。軽度ヘルニアの場合はレーザーによるヘルニア摘出が勧められることがあります。重度ヘルニアで運動障害などの重い症状がある場合は、内視鏡手術などの早期手術が勧められます。
しかし、外科的手術では線維輪の亀裂を塞ぐことができません。そのため、術後も髄核が漏れ続けて、将来ヘルニアが再発する可能性が高い原因となっています。
当院の治療
当院は、損傷した椎間板を修復する治療、セルゲル法を行っております。
当院のセルゲル法では、椎間板のひび割れ部分を埋める薬剤を注射し、それがゲル状になってひび割れを補綴するため、根本的な治療を行うことができます。椎間板のボリュームが減少することがなく、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。
椎間板ヘルニアと診断されたことのある方、腰痛でお悩みの方は、是非一度当院での診察を受けることをご検討ください。