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腰の治療症例紹介・コラム

椎間板ヘルニアの手術の種類と選び方

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腰痛疾患で最も多いのは、腰部椎間板ヘルニアです。

椎間板ヘルニアの場合は、腰痛だけではなく、臀部や足の痛み・しびれなど様々な症状が出ます。背骨が横に曲がり、動きにくくなり、重いものをもったりすると痛みが強くなることがありますので、日常生活に支障を及ぼします。

今回は腰部椎間板ヘルニアの手術について解説します。

椎間板ヘルニアの手術

外科的手術

・LOVE法

椎間板ヘルニアの手術として、過去から一般的に行われている手術です。全身麻酔にて背中を5cm~10cm程切開し、神経を避けながら靭帯や椎弓などの一部を削ったり、ヘルニア部分を切除したりします。

目視下の手術にて病変の見落としが少ないですが、切開の範囲が広いため、体の負担が大きく、入院期間が2~3週間と長くなります。

・内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(MED法)

全身麻酔にて背部を16mm程切開し、外筒管と内視鏡を挿入して、内視鏡にて突出したヘルニア部分を確認しながら切除します。

LOVE法と違い、筋肉の剥離が少なくて済み、術後の痛みも小さいです。また、術後の傷跡もLOVE法より小さく、入院期間は1~2週間程となります。

・経皮的内視鏡ヘルニア摘出術(PELD法)

椎間板ヘルニアのサイズが大きめで、症状も強いと感じられる場合はPELD手術が行われることがあります。局所麻酔で、背中から操作管と呼ばれる管を挿入して、その管から内視鏡を通してヘルニア部分を確認しながら摘出します。切開部分が小さく、術後の傷跡も目立たず、術後の痛みが小さいです。

ただし、椎間が狭い場合や脊柱管狭窄症、すべり症を合併している場合はPELD法を行うのが難しいとされています。

・脊椎固定術

すべり症や脊椎不安定症等を伴う場合は脊椎固定術が行われます。全身麻酔にて、背中を2~3㎝程度切開して、ヘルニアのある椎間板自体を取り除き、上下の椎体をチタン製のケージを入れてネジとロードで固定します。

現在は内視鏡を使用しながら手術を行っていますが、一度固定したら腰部の動きが制限されます。1~2週間の入院期間が必要です。

椎間板治療

ヘルニア部分を摘出する一般的な手術方法と違い、近年は損傷した椎間板にアプローチする椎間板治療も行われています。

外科的手術と違い、入院が必要なく、日帰りで治療を受けられる場合もあります。

・椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)

椎間板内酵素注入療法は、椎間板内に酵素を含んだ薬剤を注入することで、椎間板の組成を変化させてヘルニアを消失させます。通常は1~2日の入院が必要です。椎間板内酵素注入療法は一生に一度のみであり、再治療ができません。

・経皮的レーザー椎間板髄核減圧術(PLDD)

局所麻酔で背中から患部の椎間板ヘルニアの部分に針を刺し、刺した針の経路にレーザーファイバーを通します。椎間板の中にある髄核をレーザーで焼くことで髄核に空洞ができ椎間板が収縮します。軽度の椎間板ヘルニアだけでなく、非特異的腰痛に対しても効果があります。

・経皮的オゾン椎間板減圧術(PODD)

通常の保存治療では効果がなく、外科手術までを必要としない軽度のヘルニアに適応される治療方法です。

局所麻酔にて背中より患部の椎間板へ針を刺し、刺した針の先端よりオゾンと酸素の混合ガスを注入します。オゾン酸化により椎間板ヘルニアの容量が縮小し、神経への圧迫が軽減されます。患部の消炎効果もありますので、副作用や合併症のリスクが少ないです。

・セルゲル法(椎間板修復インプラントゲル治療術)

近年研究・開発されてきた先進治療方法の一つであり、エビデンスがしっかりしている治療法では最も新しい治療法です。

他の治療法では不可能であった「椎間板の修復」が可能なため、根治的治療になりえます。椎間板のボリュームが減少することがなく、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。

椎間板ヘルニアだけでなく、幅広い疾患に対して適用でき、また外科手術後に痛みがとれなかった方や、再発してしまった場合でも、80歳以上の高齢者でも治療を受けることができます。

椎間板ヘルニアの手術の選び方

症状の重症度

痛みやしびれの度合い、その他の症状の有無は治療種類を選ぶ基準の一つになります。

軽度の痛みのみがある場合は、手術が行われず大体は保存療法で対処されることもありますが、画像所見で軽度ヘルニアが確認されたら、レーザー治療やオゾン治療などの椎間板治療が適応されます。

強いしびれや歩行障害がある場合、日常生活へ支障が出ている場合は外科的手術が検討されます。また、保存療法を6カ月継続しても改善がない場合も手術が提案されます。

その他の疾患の有無

椎間板ヘルニア以外の疾患(すべり症、腰椎不安定症など)が合併している場合は、固定術など侵襲の大きい手術が必要になることがあります。

高血圧や糖尿病などの持病がある場合は、全身麻酔に耐えられるか、術後のリハビリに支障はないかを考慮に入れて手術の種類を選びます。

術後の仕事復帰

椎間板ヘルニアの手術を選ぶ時に、術後の復帰過程も一つの判断材料になります。従来の外科的手術は術後の入院期間があり、一定期間は安静が必要な場合もあります。仕事を休めない場合や家事等を手伝える人がいない場合は、入院の必要がない日帰りでできる椎間板治療が選択されます。

費用

手術は医療機関により、また種類によって、保険が適応されることがあれば(従来の外科的手術)、適応されない場合(近年で行われている椎間板治療)もあります。

従来の外科的手術の場合は入院期間が必要で、入院費用は治療費と別になります。入院期間が長ければ長いほど、費用がかかります。

根本治療かどうか

手術を選ぶ際の判断材料の一つは、その手術が根本治療なのかどうかという点です。

椎間板ヘルニアは線維輪に亀裂が生じ、髄核が外に飛び出した状態です。ヘルニア部分=飛び出した部分だけを切除したら、線維輪の亀裂が治りませんので、再度ヘルニアになる可能性があります。

根本的な治療が希望される場合は、椎間板のひび割れを補綴する治療を検討することをおすすめです。

椎間板ヘルニア手術後のケア

腰部椎間板ヘルニアの手術を受けたら、術後のケアも重要です。

手術の種類により異なりますが、術後の一定期間は腰に負担がかかる姿勢や動作を避けた方が良いです。

一定期間が過ぎたら、リハビリを行うことは大切です。腰回りの筋肉を強化しながら腰への負担を減らして、回復へつなげていきます。大事なのは、リハビリを継続的に行うことです。一度中断してしまうと、体に負担がかかりやすくなり、症状が再発されることもあります。

椎間板ヘルニアと診断されたことのある方は、是非一度当院での診察を受けることをご検討ください。

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