治療症例紹介・コラム

Colum 【現役外科医師監修】椎間板ヘルニアの手術一覧。費用やメリット・デメリット、どんな人におすすめなのかを大公開!

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脊椎疾患で一番多いのは椎間板ヘルニアです。

腰部椎間板ヘルニアが発症したら、腰痛、下肢の痛みやしびれなど症状が生じ、仕事や日常生活に支障が出てしまいます。

医療施設では、保存療法で様子を見ることもあれば、手術を提案されることもあります。

今回は椎間板ヘルニアのそれぞれの手術に関して説明します。

外科的手術

椎間板ヘルニアの手術は医療施設によって異なっています。

LOVE法

全身麻酔にて、背中を5~10㎝程切開し、目視下にて神経を避け、靭帯や椎弓などの一部を削るまたは切り開き奥側にあるヘルニア部分を切除します。

メリットデメリット
・中~重度の椎間板ヘルニアに対応できる
・目視下の手術にて病変の見落としが少ない
・健康保険が適応される
・切開が大きい(5~10㎝)
・靭帯や骨の一部を削ったり切ったりするため、体の負担が大きい
・入院期間が2~3週間と長い
 
費用約70,000円(3割負担)+入院費用

顕微鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(MD法)

全身麻酔にて、腰部に約2~3cmほどの皮膚切開をします。筒状の器具を使用し、顕微鏡下に脱出したヘルニアを摘出します。顕微鏡で確認しながら手術を直視下に行いますので、神経や硬膜の損傷が少ないです。切開部位の痛みはほとんどなく、出血も少なくて済み、翌日から歩行が可能です。入院期間は1~2週間程となります。

メリットデメリット
・顕微鏡での手術のため、術野の奥行きがはっきりとわかり、神経を損傷するリスクが内視鏡手術より少ない
・健康保険が適応される
・切開が2~3㎝で大きい
・入院期間が1~2週間と長い
 
費用220,000~275,000円(3割負担)+入院費用

内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(MED法)

全身麻酔にて背部を16mm程切開し、内視鏡にて突出したヘルニア部分を確認しながら切除します。筋肉の剥離が少なくて済み、術後の痛みも小さいです。また、術後の傷跡も小さく、入院期間は1~2週間程となります。

メリットデメリット
・外科手術としては1時間程で比較的に短い手術時間で行われる
・筋肉の剥離が少なくてすみ、術後の痛みも小さい
・健康保険が適応される
・術後の傷跡は16mmとやや大きい。
・入院期間は1~2週間程かかる
・手術の技術も熟練を要するため、専門的な病院でないと手術を受けられない  
 
費用231,000~300,000円(3割負担)+入院費用

経皮的内視鏡ヘルニア摘出術(PELD法)

椎間板ヘルニアのサイズが大きめで、疼痛もかなり強いと感じられる場合はPELD手術が行われる場合があります。局所麻酔で、背中から操作管と呼ばれる管を挿入、その管から内視鏡を通してヘルニア部分を確認しながら摘出します。切開部分が小さく、術後の傷跡も目立たず、術後の痛みが小さいです。入院期間は2~4日程度です。

ただし、椎間が狭い場合や脊柱管狭窄症、すべり症を合併している場合はPELD法を行うのが難しいと言われています。

メリットデメリット
・術後の傷跡は6~7㎜と小さい
・切開部分が小さく、術後の痛みも小さい
・健康保険が適応される
・入院期間が2~4日程度
・椎間が狭い場合や脊柱管狭窄症、すべり症を合併している場合はPELD法を行うのが難しい
 
費用150,000~200,000円(3割負担)+入院費用

内視鏡下脊椎手術(FESS)

椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に対して行われる手術です。背中を1㎝程切開し、内視鏡用外筒を通して、ヘルニアを摘出したり、ドリルを使用して狭くなった脊柱管を広げたりします。内視鏡を通すために棘突起や靭帯などを削ることがあります。入院期間は3~5日が必要です。

メリットデメリット
・術後の傷跡は1㎝程度で小さい
・健康保険が適応される
・内視鏡を通すために棘突起・靭帯等を削ることがあるため、身体への負担が大きい
・入院期間が3~5日程度
 
費用200,000~250,000円(3割負担)+入院費用

脊椎固定術

現在行われている固定術は内視鏡下脊椎固定術です。内視鏡とX線透視装置を使用しながら椎体間を固定する手術です。全身麻酔にて、背中を2~3㎝程度切開して、問題となっている椎間板を取り除き、上下の椎体をチタン製のケージを入れてネジとロードで固定します。1~2週間の入院期間が必要です。

メリットデメリット
・腰椎が不安定な場合、不安定な部分を固定できる
・健康保険が適応される
・侵襲が大きく、傷も大きい
・入院期間は1~2週間で長い
・体に入る金属のスクリューなどで筋肉が傷められたり、腰部の動きが制限されたりする
・一度固定したところを再び動くようにすることができない
・術後は隣接の椎間板などに負担がかかり、そこに脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアが発生することがある
・骨粗鬆症で骨が弱い場合は固定した背骨がつぶれてしまうことがある
・手術した部分に膿がたまる可能性が高い
 
費用600,000~850,000円(3割負担)+入院費用

椎間板治療

近年は、ヘルニア部分を摘出する一般的な手術方法と違い、損傷した椎間板にアプローチする椎間板治療も行われています。外科的手術と違って入院が必要ない場合もあり、日帰りで治療を受けられます。

経皮的レーザー椎間板髄核減圧術(PLDD)

局所麻酔で背中から患部の椎間板ヘルニアの部分に針を刺し、刺した針の経路にレーザーファイバーを通し、椎間板の中にある髄核をレーザーで焼くことで髄核に空洞ができ椎間板が収縮する。

メリットデメリット
・椎間板ヘルニアだけでなく、非特異的腰痛に対しても効果がある
・MED法やLOVE法より、患者様への身体の負担が少ない
・施術時間も15分程度なので、日帰りで治療が受けられる
・すべての症例の椎間板ヘルニアに適応されない
・健康保険適応外
 
費用308,000~495,000円(10割負担)

経皮的オゾン椎間板減圧術(PODD)

局所麻酔にて背中より患部の椎間板ヘルニアへ針を刺し、刺した針の先端よりオゾンと酸素の混合ガスを注入して、椎間板ヘルニアの容量が縮小し、神経への圧迫が軽減される。

自費診療

入院期間:半日

費用:330,000円(10割負担)

メリットデメリット
・手術の時間が短く、術後の傷跡も小さい
・副作用や合併症のリスクが少ない
・日帰りで治療が受けられる
・PLDDよりさらに低侵襲な手術で、レーザーの熱で稀に起こる椎間板炎などのリスクもない
・全てのヘルニアに対して有効ではない
・疼痛の緩和が弱く、複数回施術が必要な場合がある
・健康保険適応外
 
費用330,000円(10割負担)

ハイブリッドレーザー治療

局所麻酔にて、レーザーで飛び出しているヘルニアを収縮させ、オゾンを注入して神経根炎を抑える。

メリットデメリット
・手術の時間が短く、術後の傷跡も小さい
・ヘルニアの消失と炎症に対する治療が同時に行えるので、PLDDやPODDよりも効果がある
・全てのヘルニアに対して有効ではない
・健康保険適応外
 
費用440,000円(10割負担)

椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)

椎間板内酵素注入療法は、椎間板内に酵素を含んだ薬剤を注入することで、椎間板の組成を変化させてヘルニアを消失させます。通常は1~2日の入院が必要です。椎間板内酵素注入療法は一生に一度のみであり、再治療ができません。

メリットデメリット
・手術の時間が短く、術後の傷跡も小さい
・健康保険が適応される
・入院期間が1~2日で短い
・一生に一度のみであり、再治療ができない
・ヘルニアの形や出ている位置によっては、治療適応外となる
 
費用60,000円~70,000円(3割負担)

セルゲル法

セルゲル法は他の治療法では不可能であった「椎間板の修復」ができる治療となります。近年研究・開発されてきた先進治療方法の一つであり、エビデンスがしっかりしている治療法です。

損傷している椎間板に亀裂を埋める特殊な液体状のインプラントを注射して、それがゲル状になってひび割れを補綴するため、根治的治療になりえます。椎間板のボリュームが減少せず、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。

メリットデメリット
・他の治療法では不可能であった「椎間板の修復」が可能で、根治的治療になり得る
・椎間板ヘルニアだけでなく、幅広い疾患に対して適用できる
・日帰りで治療を受けられる
・外科手術後に痛みがとれなかった方や、再発してしまった場合でも治療を受けることができる
・80歳以上の高齢者でも治療を受けられる
・椎間板が潰れてほとんどなくなってしまっているような場合は治療適用外となる
・自由診療のため治療費が高額である
 
費用1,320,000円(10割負担)

椎間板ヘルニアの手術:まとめ

 セルゲル法ヘルニコアハイブリッドレーザー治療PODDPLDDFESSPELDMEDMD法LOVE法脊椎固定術
椎間板の修復××××××××××
椎間板の温存×
麻酔局所麻酔局所麻酔局所麻酔局所麻酔局所麻酔全身麻酔局所麻酔全身麻酔全身麻酔全身麻酔全身麻酔
治療時間15分程度10分程度25分程度15分程度15分程度30分~1時間1時間1時間1時間1~2時間1~1.5時間
1㎜以下1㎜以下1㎜以下1㎜以下1㎜以下1㎝6~7㎜16㎜1~3㎝5~10㎝2~3㎝
入院期間日帰り1~2日日帰り日帰り日帰り3~5日2~4日1~2週間2~3週間2~3週間1~2週間
保険適応自由診療保険診療自由診療自由診療自由診療保険診療保険診療保険診療保険診療保険診療保険診療
日常生活への復帰翌日退院後翌日翌日翌日退院後退院後退院後退院後退院後退院後
再発なしありありありありありありありありありあり

この記事の執筆者

整形外科医 丸山 祐子

所属学会・資格
日本麻酔科学会専門医・指導医
厚生労働省認定麻酔科標榜医
JB-POT
ペインクリニック学会
心臓血管麻酔科学会
セルゲル法 認定医
フローレンス法 認定医