【日帰り腰痛治療】ヘルニア・脊柱管狭窄症へのオゾン治療(PODD)の効果とは?世界基準の最新研修会
カテゴリー:
腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などに対する低侵襲治療として注目される「オゾン治療(PODD)」。ILC国際腰痛クリニック大阪院では、発祥地として世界的に有名なイタリア・ベッラーリア国立病院(ボローニャ)からルイジ・チリッロ医師を招き、オゾン治療の研修を実施しました。本記事では、研修で得られた知見をもとに、オゾン治療の効果、適応となる症例、具体的な手技、そして外科手術との違いについて詳しく解説します。
6月29日と30日の2日間にわたり実施された研修では、4名の患者さんに対する治療の実際を通じて、理論と実践の両面から技術を学びました。

オゾン治療(PODD)とは?発祥地イタリアでの位置づけ
オゾン治療は、外科手術と比較して合併症のリスクが低く、副作用も少ない治療法として位置づけられています。特に慢性的な疼痛を抱える患者さんに対して、複数回の治療を安全に実施できるという大きな利点があります。
チリッロ医師の講義では、疼痛の病態分類として、筋肉性、炎症性、神経根性、椎間板性、骨関節性の各因子が解説されました。痛みの原因は単一ではなく、多因子的な問題であることが多く、オゾン療法は筋肉、炎症、ヘルニアといった様々な因子に対して複合的に作用することができると説明されました。
イタリアでは、オゾン療法はすでに広く認知されており、国立病院での保険適用治療となっているものがあります。外科的治療後には慢性疼痛が残るケースも報告されており、オゾン療法のような低侵襲な保存的治療の選択肢が重要視されているとのことでした。
オゾン治療がもたらす腰痛治療効果|ヘルニア・脊柱管狭窄症への適応
椎間板内へのオゾン注入療法では、外科手術の前段階として75〜90%の症例で改善が報告されており、ヘルニアの容積も約60%縮小することが示されました。また、疼痛が70%以上軽減した「良好な結果」は、75%の患者で得られています。治療の有効性は、生活の質(QOL)の向上、薬剤使用量の減少、そして職場復帰などの観点から有効性が認められています。
オゾン治療が向いている人・向いていない人(適応と禁忌)
適切な治療を行うためには、なによりも正確な画像診断と患者選択が不可欠。講義では、MRI、CT、X線のそれぞれの役割と限界について詳細な解説がありました。MRIは椎間板や神経根の状態を詳細に描出しますが、加齢に伴う自然な椎間板の変化なども映し出してしまうため、痛みの原因と必ずしも一致しない場合があります。そのため、椎間板突出の有無だけでなく、機械的・炎症的な影響を臨床症状と正確に相関させることが求められます。
オゾン療法の適応となるのは、ヘルニアが比較的柔らかく、椎間関節の変形による神経の圧迫(変性性狭窄)が主な原因ではない症例です。一方で、馬尾症候群(排尿・排便障害を伴う緊急性の高い状態)や、脊髄そのものへの強い圧迫、感染症がある場合は、外科的手術が優先されます。なお、運動麻痺が急に出た場合でも、脊髄への強い圧迫を伴わないケースでは、オゾン療法によって1か月以内に回復した例も報告されています。
オゾン治療の具体的な手技|筋肉・関節・椎間板内注射の違い
研修では、透視(フルオロスコピー)ガイド下で行うオゾン療法の具体的な手技について、詳細な解説と実技デモが行われました。治療目的や対象部位に応じて、以下のようにアプローチ方法と針の種類が使い分けられます。
| 手技 | 適応 | 施行回数の目安 | 特徴 |
| 筋肉・傍脊椎注射 | 慢性腰痛・頸部痛、筋収縮 | 通常10回程度 | 最も簡単な手技。鍼治療に類似したアプローチ |
| 関節内・神経根近傍注射 | 椎間関節炎症、滑液嚢腫 | 3回程度 | 透視ガイド下で正確にターゲットを狙う |
| 椎間板内注射(ヌクレオリシス) | 椎間板ヘルニアによる神経根圧迫 | 単回 | 最も特異的で効果が高い。細い針で出血・感染リスクが低い |
極細の針で行う「椎間板内注射(ヌクレオリシス)」のメリット

椎間板内へのオゾン注入は、最も特異的で効果的な治療法です。オゾン療法は、他の椎間板治療(ラジオ波や機械的減圧術)と比較して最も細い針を使用できるため、出血や感染のリスクが非常に低いという優位性があります。
針が椎間板内に到達した後、オゾンを注入します。椎間板が密閉されている場合には、オゾン注入により内圧が上昇し、針を抜くと元の状態に戻ることで椎間板の連続性(密閉性)を確認できます。一方、椎間板が破れている場合には、オゾンが硬膜外腔へ拡散し、透視画像上で白く描出されます。針を引き抜きながら圧を維持し、椎間板外(神経の近く)に出たところで、必要に応じて局所麻酔薬とコルチゾンを注入します。
日帰り治療は可能?施術後の安静期間と注意点
・筋肉・傍脊椎注射:合併症が少ない一方、鍼治療と同様に通常10回程度の治療を繰り返す必要があります。
・関節内・神経根近傍注射:3回のセッションを目安に行います。
・椎間板内注射:単回のセッションで完結し、施術後1時間程度の安静の後に帰宅可能で、48時間は軽い活動にとどめることが推奨されます。
外科手術とオゾン治療(低侵襲治療)の比較
外科手術後には一定割合の患者に慢性疼痛(Failed Back Surgery Syndrome)が残ることが知られており、術式によっては約35%前後にのぼるとの報告もあります。オゾン治療は、こうした外科手術のリスクと比較して合併症が少なく、繰り返し施行できる保存的な選択肢として位置づけられています。
ILC国際腰痛クリニックでの研修の様子
研修の2日間で、実際に4名の患者さんに対する治療を通じて、理論と実践を結びつける貴重な機会となりました。オゾン療法は、患者さんの負担を最小限に抑えつつ、高い治療効果を期待できる優れた治療法です。今後もILC国際腰痛クリニックでは、イタリア・ベッラーリア国立病院との連携を深め、オゾン治療の技術向上と普及に努めていく方針です。
チリッロ医師の講義と実技指導は、オゾン療法の基礎から最新の知見、そして実践的な手技に至るまで、非常に充実した内容でした。正確な診断と適切な患者選択、そして繊細な手技が組み合わさることで、オゾン療法は多くの患者にとって福音となる可能性を秘めています。今回の研修で得られた知識と技術を日々の診療に活かし、より質の高い医療を提供していくことが期待されます。
参考文献
- Andreula CF, Simonetti L, De Santis F, et al. Minimally invasive oxygen-ozone therapy for lumbar disk herniation. AJNR Am J Neuroradiol. 2003;24(5):996-1000.(ベッラーリア病院・神経放射線科)
- Muto M, Avella F. Percutaneous treatment of herniated lumbar disc by intradiscal oxygen-ozone injection. Interv Neuroradiol. 2004.
- Buric J, Rigobello L, Hooper D. Five and ten year follow-up on intradiscal ozone injection for disc herniation. Int J Spine Surg. 2014;8:17.