椎間関節と呼ばれる背骨の関節や、椎間板に異常が生じ、骨がずれてしまうことがあります。これは「すべり症」といいます。
腰椎すべり症は第4腰椎が多く、次に第5腰椎、第3腰椎に見られます。原因は椎間板や椎間関節の年齢的な機能低下のため、発生率は年齢とともに高くなります。
すべり症は、腰痛、臀部や下肢の痛みとしびれなどの症状を伴います。歩行中に現れる臀部や太もものしびれ・痛みが出て、少し休憩をすると再び歩けるようになる間欠性跛行も多くみられます。
このようなすべり症ですが、治療のことが気になりますね。
ここでは腰椎すべり症の手術やその費用に関してご紹介します。
保険診療と自費診療のメリット・デメリット
手術は、医療機関によりますが、保険診療と自費診療で受けられます。
保険診療
保険診療は、健康保険に加入していれば、患者様の負担額が治療費の1~3割となります。
ただし、多くの場合はMRIなどの必要な検査が同日に撮影できなかったり、手術までの期間が長かったり、手術時に使用できる機器や医療材料に制限があることなどがデメリットとしてあげることができます。
自費診療
自費診療は、治療費の全額(10割)を患者様が負担します。費用面はデメリットですが、保険診療と違い、MRI検査と実際の手術までの期間が短くなり、幅広い器具を使用でき、より低侵襲の手術が受けられるため、メリットは少なくありません。治療法によっては、自費診療ですと、入院なし、また手術後の安静期間を短縮できる場合もあります。
すべり症の手術とその費用
一般的には、すべり症に対してまず保存療法で治療を行います。保存療法で症状が改善せず長期化している場合には、外科手術を提案されます。
手術は腰椎固定術や腰椎後方除圧術が一般的となっています。
※手術費用は治療個所や医療機関によって異なっていますが、以下は日本の医療機関で行われる1か所あたりの手術費用をまとめています。
※入院が必要な手術の場合は、治療費だけでなく、入院費用(入院基本料、食事代、など)もかかります。全てを合わせると、100万円以上になる場合もあります。
腰椎固定術
固定術は、神経を圧迫している部分を切除し、骨を移植して背骨を固定します。
背中を約4.5cm切開し、症状が出ている側の椎間関節を切除して椎間板を摘出し、そこに患者本人の骨や骨バンクからの骨を移植して、上下の椎体と内固定材料(スクリュー、ロッドなど)を使って圧着します。
すべった腰椎を固定することで、不安定となっている背骨の安定を図ることができ、さらなるすべりを防ぐことができます。
保険適応
入院期間:約2週間
安静期間:術後3か月
費用:600,000~850,000円(3割負担)
腰椎後方除圧術
全身麻酔にて、腰部に約3cmを切開して、顕微鏡で確認しながら椎弓などを取り除き、脊柱管を広げていきます。
すべり症に対しては単独で行われる場合もあれば、固定術を併用する場合もあります。
除圧術では、骨が滑って神経が圧迫されている状態を改善します。固定術を併用する場合は、背骨の安定も図ることができます。
保険適応
入院期間:約1週間(除圧術単独の場合)
費用:250,000~400,000円(3割負担)(除圧術単独の場合)
当院の治療―セルゲル法
当院ではすべり症に対応する治療法としてセルゲル法を行っています。
最近の研究では、椎間板変性がすべり症を引き起こす要因とされております。※1
そのため、変性してしまった椎間板を修復しなければすべりの予防ができないと考えています。
※1 参照元:I. Akkawi, H. Zmerly. Degenerative Spondylolisthesis: A Narrative Review. Acta Biomedica, vol. 92, No.6, 2021.
当院では変性してしまった椎間板にゲル状の薬剤を注入して、椎間板を修復させます。椎間板のボリュームが減少することがなく温存されて、すべり症の原因となる脊椎のずれが進まないように予防できます。
従来の手術と違い、切開をしない治療ですので、術後のリスクも少ないです。
入院期間は半日のみで、治療当日に歩いてご帰宅できます。
セルゲル法は自費診療であり、椎間板1か所で1,320,000円(10割負担)がかかります。
すべり症と診断されたことのある方、腰痛でお悩みの方は、是非一度当院での診察を受けることをご検討ください。