椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアをよく理解いただくために、症状が出るメカニズムを順を追って説明致します。
(前提)椎間板を構成しているもの
・髄核:椎間板の中心にあり主に水分で構成されるゼリー状のもの
・線維輪:髄核を保護するようにミルフィーユのような細かい層になって覆っているもの。主にコラーゲンで構成されています
椎間板ヘルニアの発生メカニズム
1.加齢などの様々な要因によって椎間板の線維輪に傷ができ、そこに髄核が押し出されてゆきます
押し出させた椎間板が神経に触れることで坐骨神経痛などのしびれの症状が出やすくなります。
2.悪化すると髄核が更に押し出され、線維輪を突き抜け、完全に髄核が神経の方へ飛び出した状態になります
この状態ではしびれなどの神経障害に加え、新鮮な髄核成分が脊髄神経の周りにある成分と反応を起こします。本来ない異常物質(髄核)が脊髄に押し出されてきたことによって、人体に備わっている免疫反応が起こり、それが炎症を起こし痛みを発生させます。
その他に、完全にヘルニアが脱出して椎間板から離れてしまった「遊離型」という状態もありますが、ここでは割愛致します。
椎間板ヘルニアの自然治癒について
インターネットで検索しても良く出てきますが、椎間板ヘルニアの自然治癒について、きちんと説明してあるページがほとんどありませんので、解説したいと思います。
まず、自然治癒はするのか、しないのか、についての回答は、「する」ということは研究でも分かっています。
ただし全ての椎間板ヘルニアが自然治癒するわけではありません。自然治癒する椎間板ヘルニアには条件があります。
その条件とは、上記の椎間板ヘルニアとはで説明した飛び出し型のように、
「髄核と脊髄が接触をして、免疫反応が起きること」
となります。
そのため、椎間板ヘルニアの中でも髄核が線維輪を飛び出さずに脊髄に触れていない場合は免疫反応が起きませんので、自然治癒することはありません。
自然治癒する椎間板はほっておいて問題ないのか?
ここまで読んで頂いてみなさんはどうお考えになりましたでしょうか?問題ないと思いますか?
答えは「問題ある」です。
理由はヘルニアが一度は自然治癒したとしても、傷のついた線維輪が治らない限り、何度でも髄核が押し出されてヘルニアになる可能性があるからです。
パンクしたタイヤと考えて頂くと理解しやすいかもしれません。チューブの穴を塞がないと空気を入れても穴から漏れ続けてしまいますよね。
ではどうすれば良いのか。
残念ながら傷のついた線維輪を修復する治療法というのは日本ではほとんどありません。
○○切除術と呼ばれる手術やレーザー治療や、最近ではヘルニコアという治療法もありますが、ヘルニアを取ったり、減圧によって小さくするに留まるため、線維輪は修復できません。
日本ではいかに低侵襲で椎間板ヘルニアを取ったり小さくするか、という方向には発展していますが、根本原因を治療する方向には発展できていないと思います。
これまで椎間板ヘルニアのメカニズムと治療について世界中で研究されていてきており、線維輪の傷を修復する必要性は十分認識されておりますが、その治療法というのはなかなか世の中に出てきておりませんでした。
当院では長年の努力と交渉によって、椎間板の修復が可能な治療法を見つけ、治療に取り入れることに成功致しました。当院のセルゲル法は、DiscoGelという特別な医療機器を使用するのですが、海外では「Gelified ethanol」と呼ばれることもあります。世界中で使用されエビデンスもしっかりしている治療法ですので、もし海外の治療情報を見てみたい、という場合には、「DiscoGel Disc」※Discは椎間板、や「Gelified ethanol Disc」といったキーワードで検索するとたくさん情報が出てきます。
参考に当院のセルゲル法のページはこちらです↓↓
https://ilclinic.or.jp/treatment/cellgell
※セルゲル法で使用されるDiscogelは医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医療機器ですが、「医師等の個人輸入」により適法な輸入許可を得ています。日本では、未承認医療機器を、医師の責任において使用することができます。
いかがでしたでしょうか?
まとめますと、
・椎間板ヘルニアのヘルニアだけ取ったり、小さくしても根本治療にならない
・椎間板ヘルニアは自然に治る場合もありますが、根本原因(線維輪の傷)が治らなければ再発するリスクは高いままである
・線維輪の傷を治せる治療法はほとんどない
となります。みなさまのご参考になれば幸いです。
この記事の執筆者:院長 簑輪忠明