すべり症の原因と予防法を徹底解説!高齢者に多い理由とは
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すべり症は、腰部椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症と並び、脊椎疾患で最も多い疾患とされています。
今回はすべり症の原因と予防方法について解説します。
すべり症とは
腰椎すべり症とは、腰の部分で椎骨が正常な位置からずれた状態をいいます。
すべり症は骨が前方にすべる「前方すべり」と後方にすべる「後方すべり」があります。

2つのタイプ
すべり症は「腰椎変性すべり症」と「腰椎分離すべり症」の2種類に分けられます。
腰椎の位置が本来の場所からずれることで出る腰痛の症状を「腰椎変性すべり症」といいます。
他方、本来の位置からずれた背骨に負担がかかり、腰椎の後ろにある突起部分にひびが入り、腰椎全体が不安定になることを「腰椎分離すべり症」といいます。
すべり症の症状
軽度の腰椎すべり症では無症状であることも多く、症状が出現するようになってから検査を受けて、腰椎すべり症が進行してしまっている場合もあります。
腰椎すべり症の主な症状は、腰痛、臀部や下肢の痛みとしびれです。
すべり症のよくある症状の一つは、歩行中に現れる臀部や下肢のしびれ・痛みです。これは間欠性跛行といい、少し休憩をすると再び歩けるようになる状態です。
変性すべり症は脊柱管狭窄症を伴うことが多く、排尿障害などの狭窄症の症状がみられます。
分離すべり症の場合は、分離部分に負荷がかかる動作(例えば、腰を後ろに反らす動作など)で痛みが増強したり、分離部などで神経根への圧迫があると下肢の痛みやしびれなどを発生したりすることもあります。
すべり症の原因
長い間は腰椎変性すべり症の原因が不明のままとされていましたが、最近の研究では椎間板変性がすべり症を引き起こす要因とされております(*1)。
*1 参照元:I. Akkawi, H. Zmerly. Degenerative Spondylolisthesis: A Narrative Review. Acta Biomedica, vol. 92, No.6, 2021.
日常生活の負荷で、また加齢とともに椎間板などが変性していき、椎間板変性が進めば進むほど椎間関節や椎体も変性してしまい、その結果、腰椎が正常な位置からずれてしまいます。これは腰椎変性すべり症です。

椎間板変性から始まる変性プロセスは、腰部への外傷や遺伝的要因も関与する場合があります。
年齢との関係
年をとるとともに、椎間板や靭帯・関節などの腰椎を固定している組織が変性を起こし、それに伴って腰椎の安定性が失われていき、すべり症になります。これは変性すべり症であり、中高年(40代以降)に多く見られます。
他方、分離すべり症の方は若年層(10~20代)に多く発生します。その原因は、骨が成長する思春期に、腰に大きな負担のかかるスポーツ(陸上競技、体操やサッカーなど)を続けており、その結果関節突起の疲労骨折が起こることです。
筋力低下と姿勢との関連
腹筋や背筋は腰椎を安定させる筋肉です。運動不足などで筋力が低下していったら、腰椎の安定性も低下して、すべり症につながります。
また、猫背などの悪い姿勢があれば、腰に余計に負担がかかり、筋力低下を招きます。すべりを悪化させる可能性があります。
すべり症の予防方法
姿勢の改善
日頃、姿勢を意識するだけで、腰椎への負担を軽減できます。猫背や反り腰のような姿勢を避けましょう。
立つときは両足に体重を均等に乗せ、座るときは骨盤を立てるように座面に腰を深く入れましょう。


運動の習慣
筋力低下はすべり症につながっていきますので、筋力トレーニングをすることで、すべり症を予防できます。筋肉を鍛えることで、筋肉のバランスを整えて、腰への負担を軽減させましょう。
当院の治療
セルゲル法
前述したように、すべり症の原因は椎間板変性にあるとされております。そのため、変性してしまった椎間板を修復して、すべり症の予防や進行を防ぐことが可能です。
当院のセルゲル法では、椎間板のひび割れ部分を埋める薬剤を注射し、それがゲル状になってひび割れを補綴するため、根本的な治療を行うことができます。椎間板のボリュームが減少することがなく、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。
セルゲル法は、従来の手術と違い、切開をしない治療ですので、術後のリスクも少ないです。
入院期間は半日のみで、治療当日に歩いてご帰宅できます。
フローレンス法・Qフローレンス法
脊柱管狭窄症に対してはフローレンス法・Qフローレンス法を行っています。
フローレンス法とQフローレンス法は、脊柱管狭窄症に対して行える、リスクの少ない低侵襲治療です。
部分麻酔と鎮静下で経皮的にデバイスを挿入して、狭くなった脊柱管を広げます。
デバイスを入れることで脊柱の回旋や屈曲を維持しながら、椎体の安定化を図り、脊柱管を広げて、椎間板の突出を抑えて黄色靭帯肥厚を軽減できます。狭くなっていた脊柱管が広がることにより、痛みが解消されます。
フローレンス法及びQフローレンス法は、低侵襲でリスクの少ない治療であるため、治療後の合併症や症状の再発に関する報告がありません。

すべり症と診断されたことのある方は、是非一度当院での診察を受けることをご検討ください。