治療症例紹介・コラム

Colum 世界中で研究されるフローレンス法、その論文を読み解いてみた!

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フローレンス法とは、欧州や南アメリカを中心に導入されている先進的な脊柱管狭窄症の治療です。

世界中の医療施設でフローレンス法の治療に関する研究結果について発表されています。

今回はフローレンス法関連論文に関してご紹介します。

フローレンス法とは

フローレンス法は、脊柱管狭窄症に対して行える、リスクの少ない低侵襲治療です。局所麻酔と鎮静下で経皮的にスペーサーを挿入して、狭くなった脊柱管を広げます。治療後は取り外しなども可能です。

Lobsterスペーサーを入れることで脊柱の回旋や屈曲を維持しながら、椎体の安定化を図り、脊柱管を広げて、椎間板の突出を抑えて黄色靭帯肥厚を軽減できます。狭くなっていた脊柱管が広がることにより、痛み・しびれなどの症状が解消されます。

フローレンス法に関する論文

世界中の医療施設でフローレンス法の治療に関する研究結果について発表されています。

ここに留意したいのは、論文がヨーロッパ等で発表されており、論文中の治療名も欧米で定着している「Lobster」「Lobster Project」となっています。

ここでは以下の三つの論文で紹介されているフローレンス法について説明します。

1. Luigi Manfre, et al. Successful use of percutaneous interspinous spacers and adjunctive spinoplasty in a 9 year cohort of patients. Journal of NeuroInterventional Surgery. 12(7), 2020.

2. Luca Jacopo Pavan, et al. Clinical and radiological outcomes following insertion of a novel removable percutaneous interspinous process spacer: an initial experience. Spinal Neuroradiology. 64(9), 2022.

3. Stefano Marcia, et al. Feasibility, safety, and efficacy of a new percutaneous interspinous device: a retrospective multicenter study. Neuroradiology. 2024.

フローレンス法の適応について

フローレンス法は、次のような場合に適応されます。

Schizas分類でのグレードC~Dの脊柱管狭窄症、または保存療法で効果のなかったグレードBの脊柱管狭窄症(Manfre 2020)

3ヶ月行われた保存療法で効果のなかった腰部脊柱管狭窄症(Pavan 2022)

腰部脊柱管狭窄症や椎間孔狭窄症による神経性間欠跛行(Marcia 2024)

脊柱管狭窄症のSchizas分類とは

Schizas分類とは、スイスのSchizas氏が定義した脊柱管狭窄症の重症度の分類です。

グレードA:硬膜嚢内に脊髄液が認められるが、その分布は不均一である

グレードB:細根が硬膜嚢の全体を占めるが、脊髄液はまだ認められる

グレードC:細根は認められず、硬膜嚢は均一な灰色信号で脊髄液の信号は認められない。後方に硬膜外脂肪が認められる。

グレードD:細根が認められず、後方に硬膜外脂肪もない

グレードAは狭窄がない、または軽度の狭窄で、グレードBは中等度の狭窄症で、グレードCは重度で、グレードDは極度の狭窄症と定義されている。*1

*1 参照元:Schizas C, et al. Qualitative grading of severity of lumbar spinal stenosis based on the morphology of the dural sac on magnetic resonance images. Spine, 2010, 35.

この分類を見ると、論文ではフローレンス法の適応は中等度~極度の脊柱管狭窄症に適応するといいます。

フローレンス法の治療効果について

Manfre氏の研究

256名が経皮的棘突起間装置の単独治療で、432名は隣接棘突起の脊椎増強術を同時に受け、計688名の患者が治療を受けました。

Lobsterスペーサーの挿入後、脊柱管と椎間孔の拡大、黄色靭帯肥厚の改善が認められました。症状は、治療3ヶ月後にチューリッヒ跛行質問票スコアで3.2から1.3に減少し、有意な改善が認められ、治療12ヶ月後のフォローアップでも同じだったといいます。

(A)腰部脊柱管狭窄症が認められる治療前のCT画像。(B)棘突起間スペーサー挿入後、棘突起間隔と脊柱管の拡大が確認できる。

治療直後の合併症は見られず、治療後は硬膜外注射や神経ブロックを必要とした患者はいなかったのです。

Pavan氏の研究

49名の患者が治療を受け、48名に対してフォローアップができたのです。治療後に合併症の報告がなかったといいます。

治療3ヶ月後のフォローアップでは、症状の有意な軽減が認められ、治療後に椎間孔の平均面積が増加したとのことです。

a:L4/5の椎間板突出と黄色靱帯肥厚による脊柱管狭窄症を示すCT画像。b~d:棘突起間隔の拡大と黄色靭帯肥厚の軽減が認められる治療後のCT画像

Marcia氏の研究

258名の患者が治療を受けました。治療6ヶ月後のフォローアップでは99.6%の患者において症状改善が認められています。

疼痛の改善
間欠性跛行の改善

いずれの論文においては、Lobsterスペーサーを用いた治療が効果的で安全な低侵襲治療とされています。

脊柱管狭窄症と診断され、腰痛や間欠性跛行でお悩みのある方は、是非一度当院での診察を受けることをご検討ください。

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