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腰の治療症例紹介・コラム

脊柱管狭窄症の治療法:保存療法と手術の選択

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脊柱管狭窄症は2004年に発表された日本脊椎脊髄病学会の脊椎手術調査報告によると、椎間板ヘルニア・すべり症と共に一番多く発症する疾患です(*1)

*1 参照元:野原裕他「日本脊椎脊髄病学会脊椎手術調査報告」『日本脊椎脊髄病学会雑誌』第15巻2号、2004年。

今回は脊柱管狭窄症の治療について解説します。

脊柱管狭窄症とは

脊柱管狭窄症とは、神経の通り道である脊柱管が狭窄する(=狭くなる)ことにより、神経が圧迫される状態です。腰椎が不安定なことが原因の場合、身体の動きで痛くなることが多いです。

腰椎の脊柱管狭窄症では、腰から下のしびれや痛みが出現します。歩いているとお尻や足に痛みやしびれが生じ、休むと楽になるが、また歩くと再び痛みが出るといった、間欠性跛行という症状が特徴的です。

脊柱管狭窄症の治療:保存療法

薬物療法

腰や下肢の痛み・しびれが強い場合は、消炎鎮痛薬の内服が勧められています。症状に応じては点滴や注射での対処もあります。

薬や注射などの適応、効果は個人差がありますので、一人で判断せず、必ず医師と相談しましょう。

薬物療法で症状を緩和できますが、完治には至らない場合もあります。

副作用に注意し、医師の指示に従って薬を服用するようにしましょう。

症状の程度や患者の状態により、理学療法と組み合わされることがあります。

理学療法

背骨の動きを改善することで、脊柱管狭窄症の症状を緩和できます。

・背骨の動きを良くするための運動

この運動の目的は、身体をしなやかに動かし、骨盤から背骨にかけての動きを改善させることです。

1.両膝を立てて、膝からゆっくりと倒していく

2.倒すときに、膝→骨盤→腰の順に動くように気を付けてください

骨盤から動いてから、腰が動くという感覚にしっかりと意識を向けてください

3.動きを止めないようにゆっくりと連続して2~3分程度行いましょう

・背骨の動きを良くするための運動

この運動の目的は、お腹の力を利用して背骨を動かせるようにすることです。

背骨の動きを良くすることで、立ち上がりや歩行などの際に生じる腰の負担を和らげることができます。

1.おへその下に手を当てる

2.鼻から息を吐きながら手を当てているところを凹ませる

3.手を当てたところを凹ませながら、背中を浮かさずにお尻だけを浮かせてください

4.お尻を浮かせたら、ゆっくりと下ろす

5.お尻を浮かせるときに骨盤から腰椎(腰の背骨)が動いていることに意識を向けて行いましょう

脊柱管狭窄症の治療:手術

保存療法で改善がなかったり、効果が不十分であったりする場合、また症状が進行している場合は、手術が提案されます。

外科的手術:腰椎椎弓切除術と脊椎固定術

脊柱管狭窄症の手術は、腰椎椎弓切除術と脊椎固定術が一般的です。

腰椎椎弓切除術は全身麻酔にて、内視鏡を使用して行われ、背部の皮膚を切開し、椎弓の一部や肥厚した黄色靭帯を切除することにより神経の圧迫を取り除き、脊柱管を広げます。

脊椎固定術は全身麻酔にて、背部の皮膚を切開し、変性した椎間板を取り除いて、腰骨から採取した骨を詰めたケージを入れて、脊椎をスクリューとロッドで椎骨を固定します。腰椎椎弓切除術の後に行われる場合もあります。

脊柱管狭窄症に対して一度手術をしたら、その後に脊柱管が再び狭くなり、症状が再発することも少なくありません。その場合は高い割合(10%~23%)で再手術が必要とされます(*1)。

また、併存疾患があると、術後の合併症の発生率が高くなり、回復期間も長くなります。特に、高齢の患者は併存疾患の発生率が高く、60~73.9%と言われています。(*2)。

中には、糖尿病、呼吸困難、慢性閉塞性肺疾患、慢性疾患に伴いステロイド剤の服用は、術後の合併症のリスクを高めています(*3)。

*1 参照元:Atlas SJ, et al. Long-term outcomes of surgical and nonsurgical management of lumbar spine stenosis: 8 to 10 year results from the maine lumbar spine study. Spine, 2005, 30(8). Kim CH, et al. Reoperation rate after surgery for lumbar spinal stenosis without spondylolisthesis: a nationwide cohort study. Spine Journal, 2013, vol.13-10.

*2 参照元:Khalepa R.V., Klimov V.S. Lumbar spinal stenosis in elderly and senile patients: problem state and features of surgical treatment. Russian journal of neurosurgery. 2017;(1).

*3 参照元:Deyo, R. A., Hickam, D., Duckart, J. P., Piedra, M. Complications After Surgery for Lumbar Stenosis in a Veteran Population. Spine. 2013;38(19).

低侵襲施術:フローレンス法・Qフローレンス法

脊柱管狭窄症に対してはフローレンス法・Qフローレンス法も行われています。

フローレンス法とQフローレンス法は、脊柱管狭窄症に対して行える、リスクの少ない低侵襲治療です。

部分麻酔と鎮静下で経皮的にデバイスを挿入して、狭くなった脊柱管を広げます。

デバイスを入れることで脊柱の回旋や屈曲を維持しながら、椎体の安定化を図り、脊柱管を広げて、椎間板の突出を抑えて黄色靭帯肥厚を軽減できます。狭くなっていた脊柱管が広がることにより、痛みが解消されます。

フローレンス法及びQフローレンス法は、低侵襲でリスクの少ない治療であるため、治療後の合併症や症状の再発に関する報告がありません。

脊柱管狭窄症の適切な治療の選び方

どの治療が適切なのか、その判断は医師との相談で決めます。

治療を選ぶ際、以下のことが基準の一つになります。

症状の程度

症状が軽い場合は、保存療法(薬物療法、理学療法)が第一選択となることが多いです。

保存療法で改善がなければ、手術が検討されます。

下肢の筋力低下や感覚障害、膀胱直腸障害がある場合は、手術が必要になります。

その他の疾患の有無

脊柱管狭窄症に合併して腰椎不安定症などもある場合は、固定術など侵襲の大きい手術が必要になります。

糖尿病や慢性疾患などの持病がある場合は、全身麻酔に耐えられるか、術後のリハビリに支障はないかを考慮に入れて手術の種類を慎重に選びます。

費用

手術は医療機関により、また種類によって、保険が適応されることがあれば(従来の外科的手術)、適応されない場合(日帰りの低侵襲施術)もあります。

従来の外科的手術の場合は入院期間が必要で、入院費用は治療費と別になります。入院期間が長ければ長いほど、費用がかかります。

術後の仕事復帰

脊柱管狭窄症の手術を選ぶ時に、術後の復帰過程も判断材料の一つになります。従来の外科的手術は術後の入院期間があり、一定期間は安静が必要な場合もあります。仕事を休めない場合や家事等を手伝える人がいない場合は、入院の必要がない日帰りでできる施術が選択されます。

脊柱管狭窄症でお悩みの方は、是非一度当院での診察を受けることをご検討ください。

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