脊柱管狭窄症は背骨の中にある神経の通り道(=脊柱管)が狭くなった状態です。日本脊椎脊髄病学会の脊椎手術調査報告によると、最も多い脊椎疾患だと言われています(*1)。
*1 参照元:野原裕他「日本脊椎脊髄病学会脊椎手術調査報告」『日本脊椎脊髄病学会雑誌』第15巻2号、2004年。
今回は腰部脊柱管狭窄症のリスクと対策について解説します。
脊柱管狭窄症とは
脊柱管狭窄症とは、背骨の中にある神経の通り道(=脊柱管)が狭くなった状態です。
脊柱管の狭窄は、脊椎のどの部分にも起こり得ますが、最も発症頻度が高いのは腰(腰部脊柱管狭窄症)と、首(頸部脊柱管狭窄症)にです。いずれも50歳以上に好発し、男性に多い傾向があります。
首、胸、腰の広範囲にわたって脊柱管が狭くなった場合は、広範脊柱管狭窄症と呼ばれ、難病に指定されています。
脊柱管狭窄症の要因
脊柱管狭窄症の主な原因は加齢による椎間板の変性や骨・靱帯の変形です。
加齢変化により、椎間板の変性が始まり、椎間板の変性が進むと、線維輪の亀裂から髄核が外に飛び出していき、椎間板ヘルニアとなります。椎間板ヘルニアで脊柱管が圧迫されると、脊柱管狭窄症となります。
また、椎間板変性症が進めば進むほど、椎間板内の水分がなくなっていき、椎間板が薄くなり、クッション機能を失っていきます。それで、脊椎が不安定となったり、ずれてしまったりすることがあります。背骨が滑ってしまうことで、脊柱管が狭くなることがありますので、脊柱管狭窄症となります。
稀ではありますが、先天的に脊柱管が狭い場合もあります。
脊柱管狭窄症の症状
脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されると、腰や下肢の痛み、しびれ、脱力などの症状が発生します。
右側だけに症状がある場合は右側の神経根が圧迫され、左側に症状がある場合は左側の神経根が圧迫されているのです。体の両側に症状がある場合は、馬尾神経が圧迫されていると言えます。
脊柱管狭窄症の典型的な症状で、間欠性跛行があります。
間欠性跛行とは、歩いている内に下肢がしびれたり力が入らなくなったりして、歩けなくなるが、しゃがみこんだり腰かけたりして少し休むとまた歩けるようになることです。
狭窄症が進行すればするほど、歩ける距離が短くなります。
脊柱管狭窄症が進行すると、下肢の力が落ちたり、肛門周囲のほてりや尿の出が悪くなったり、逆に尿が漏れるという症状が出ます。
脊柱管狭窄症の対策
脊柱管狭窄症に対してよく行われる治療方法は脊椎手術(腰椎椎弓切除術、脊椎固定術)ですが、手術がリスクの高いものであるためそれを避けたいという方も少なくありません。
ここでは、外科的手術以外の対策に関して紹介します。
理学療法
背骨の動きを改善することで、脊柱管狭窄症の症状を緩和できます。
・背骨の動きを良くするための運動
この運動の目的は、身体をしなやかに動かし、骨盤から背骨にかけての動きを改善させることです。
1.両膝を立てて、膝からゆっくりと倒していく
2.倒すときに、膝→骨盤→腰の順に動くように気を付けてください
骨盤から動いてから、腰が動くという感覚にしっかりと意識を向けてください
3.動きを止めないようにゆっくりと連続して2~3分程度行いましょう
・背骨の動きを良くするための運動
この運動の目的は、お腹の力を利用して背骨を動かせるようにすることです。
背骨の動きを良くすることで、立ち上がりや歩行などの際に生じる腰の負担を和らげることができます。
1.おへその下に手を当てる
2.鼻から息を吐きながら手を当てているところを凹ませる
3.手を当てたところを凹ませながら、背中を浮かさずにお尻だけを浮かせてください
4.お尻を浮かせたら、ゆっくりと下ろす
5.お尻を浮かせるときに骨盤から腰椎(腰の背骨)が動いていることに意識を向けて行いましょう
低侵襲施術
脊柱管狭窄症に対してはフローレンス法・Qフローレンス法とセルゲル法も行われています。
いずれも低侵襲で身体の負担が少ない施術です。脊椎固定術等の全身麻酔で行われる外科的手術を避けたい患者様にお勧めしています。
・フローレンス法・Qフローレンス法
フローレンス法とQフローレンス法は、脊柱管狭窄症に対して行える、リスクの少ない低侵襲治療です。
部分麻酔と鎮静下で経皮的にデバイスを挿入して、狭くなった脊柱管を広げます。
デバイスを入れることで脊柱の回旋や屈曲を維持しながら、椎体の安定化を図り、脊柱管を広げて、椎間板の突出を抑えて黄色靭帯肥厚を軽減できます。狭くなっていた脊柱管が広がることにより、痛みが解消されます。
・セルゲル法
脊柱管狭窄症は、椎間板がひび割れることで中心成分が飛び出し、その飛び出した部分が脊柱管を狭くすることで起こります。椎間板のひび割れは修復できていなければ、再度ヘルニアが発生したり、再度脊柱管が狭くなったりしてしまう可能性があります。
当院のセルゲル法では、椎間板のひび割れ部分を埋める薬剤を注射し、それがゲル状になってひび割れを補綴するため、根本的な治療を行うことができます。椎間板のボリュームが減少することがなく、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。
脊柱管狭窄症と診断されたことのある方は、一度当院での診察を受けることをご検討ください。