椎間板ヘルニアは脊椎疾患で一番多いと言われています。よく知られている脊椎疾患です。腰椎椎間板ヘルニアが発症すると、腰痛、臀部痛、下肢の痛みやしびれなどの症状が出て、日常生活に影響を与えてしまいます。
この椎間板ヘルニアが自然治癒することはインターネットで良く見かけますが、今回は椎間板ヘルニアが自然に治るものなのかに関して解説します。
椎間板ヘルニアとは
椎体と椎体の間には椎間板が存在しています。椎間板は中央にゼラチン状の髄核があり、髄核を取り囲むようにコラーゲンを豊富に含んだ線維輪があります。
線維輪に亀裂が生じ、髄核が外に飛び出した状態は、椎間板ヘルニアといいます。
椎間板ヘルニアの発生メカニズム
正常の椎間板ですと、激しい運動をしても、そのエネルギーがクッションである椎間板で吸収されて、周囲の骨や靭帯にも影響はほとんど生じません。
しかし、早ければ16歳ぐらいの頃から椎間板が損傷し始めます。
様々な原因で線維輪に亀裂が生じ、中の髄核が急激に脱出します。これで椎間板ヘルニアができてしまいます。髄核がゆっくりと脱出すると、髄核の量が減少し、椎間板機能の低下を引き起こします。
最終的にクッション機能の低下により、脊椎の負担が増え、脊椎や靭帯の変形が始まり、椎間関節炎や靭帯骨化を引き起こし、脊柱管狭窄症や椎間孔狭窄症などを併発します。
椎間板の損傷から始まり、様々な脊椎の病気が進行していくのです。
椎間板ヘルニアは自然治癒するか?
腰椎椎間板ヘルニアの自然治癒に関しては様々な報告があります。
これらをまとめると、メタアナリシスではヘルニアの自然吸収率が66.6%であった一方、住民を対象とした研究では大部分のヘルニアが変わらないと報告されています。*1
画像上で確認される椎間板ヘルニアは、4年後では14%が退縮、81%が不変、5%が増大しており、8年後では17.5%が退縮、65%が不変、12.5%が増大しており、ヘルニアのサイズがほとんどの場合に変わらないのです。*2
*1 参照元:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会編集『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン』改訂第3版、2021年。
*2 参照元:Per Kjaer, et al. Progression of lumbar disc herniations over an eight-year period in a group of adult Danes from the general population – a longitudinal MRI study using quantitative measures. BMC Musculoskeletal Disorders. Vol.17 No15, 2016.
どのようなヘルニアが自然治癒するかも研究でわかっています。
ヘルニアが大きく脱出していれば早く吸収されるのです。脱出型や遊離型のヘルニアは突出型と比べれば、神経や靭帯と接触しているため、炎症が起こり、免疫反応が起きるため、ヘルニア部分が徐々に吸収されるとのことです。*3
*3 参照元:Reijo A. Autio, et al. Determinants of Spontaneous Resorption of Intervertebral Disc Herniations. SPINE. Vol.31, No.11, 2006.
ヘルニアが自然治癒されるため、ほっておいて大丈夫なのか?
椎間板ヘルニアが時間経過とともに自然治癒されるから、何の治療をしなくてもほっておいても問題ないかといえば、違います。
その理由は、ヘルニア部分が吸収されたとしても、損傷した椎間板が治らないからです。
線維輪に一度亀裂が生じてしまうと、それを修復しなければ、たとえヘルニアが吸収されたとしても、いつかまた髄核が漏れ出てしまう可能性があります。再度髄核が椎間板の外に漏れ出ていったら、ヘルニアが再発されます。
ヘルニア摘出術やレーザー治療などはヘルニアを切除したり、ヘルニアを小さくする治療となりますが、根本的な原因である線維輪の亀裂を修復できません。
椎間板ヘルニアの根本的治療:セルゲル法
当院は、損傷した椎間板を修復する治療、セルゲル法を行っております。
当院のセルゲル法では、椎間板のひび割れ部分を埋める薬剤を注射し、それがゲル状になってひび割れを補綴するため、根本的な治療となり得ます。
椎間板のボリュームが減少することがなく、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。
椎間板ヘルニアと診断されて、腰痛などでお悩みのある方は、是非一度当院での診察を受けることをご検討ください。