治療症例紹介・コラム

Colum 脊柱管狭窄症の後遺症とは?

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脊柱管狭窄症は背骨の中にある神経の通り道(=脊柱管)が狭くなった状態です。日本脊椎脊髄病学会の脊椎手術調査報告によると、最も多い脊椎疾患だと言われています(*1)。

*1 参照元:野原裕他「日本脊椎脊髄病学会脊椎手術調査報告」『日本脊椎脊髄病学会雑誌』第15巻2号、2004年。

今回は腰部脊柱管狭窄症の後遺症について解説します。

脊柱管狭窄症とは

脊柱管狭窄症は大きく、①神経根型、②馬尾型、③混合型の3つのタイプに分けられます。

神経から枝分かれをして背骨の間から出る神経の根本が圧迫されている場合は神経根型の狭窄症で、馬尾神経(脊髄の下端から下に向かって伸びている神経の束)が圧迫される場合は馬尾型で、両方が合併している場合は混合型の脊柱管狭窄症といいます。

脊柱管狭窄症の主な症状は、腰の痛み、下肢の痛みとしびれです。最も特徴的な症状は、間欠性跛行があります。歩くときは足に痛みやしびれを感じて歩けなくなり、少し休むと楽になりまた歩けるが、しばらくすると再び痛くなる、という状態です。

重度の脊柱管狭窄症の後遺症

脊柱管狭窄症が進行すればするほど、次のような後遺症が発生することがあります。

膀胱機能障害、下部尿路症状

間欠性跛行のある患者の半分くらいは排尿困難、失禁、夜間頻尿、尿路感染症などの症状も訴えています。このような症状は馬尾型の脊柱管狭窄症が進行して起こり、外科的手術の適応基準の一つとなります。

性機能障害

重度の脊柱管狭窄症は、性機能障害も発生する場合があります。これは馬尾型の狭窄症の症状の一つとして起こり、また仙骨神経根が圧迫された際に発生するものです。

腎性骨異栄養症

重度の脊柱管狭窄症の後遺症の一つには、腎性骨異栄養症(腎臓の機能が低下して骨代謝がうまくいかなくなる疾患の総称)があるとされています。これは腎疾患が併発している場合に発生し、脊柱管狭窄症と腎疾患の症状がより強く出るといいます。

※参考:Jason Gandhi, et al. Neuro-urological sequelae of lumbar spinal stenosis. International Journal of Neuroscience. 2018, 128(6).

脊柱管狭窄症の手術と術後の後遺症

脊柱管狭窄症の外科的手術

脊柱管狭窄症の最も一般的な手術は、腰椎椎弓切除術と脊椎固定術です。

腰椎椎弓切除術は全身麻酔にて、背部を18~20mm程皮膚を切開し、内視鏡を使用して椎弓の一部や肥厚した黄色靭帯を切除することにより神経の圧迫を取り除き、脊柱管を広げます。

脊椎固定術は、全身麻酔にて、背部の皮膚を切開し、変性した椎間板を取り除いて、腰骨から採取した骨を詰めたケージという人工物を入れて脊椎を整形した後、スクリューとロッドで椎骨を固定します。

手術後の後遺症

外科的手術を受けた後も後遺症が発生することがあります。

手術部位の痛み

外科的手術では皮膚を切開して筋肉を剥がして骨を削りますので、術後も痛みが継続します。多くの場合は、時間の経過とともに徐々に緩和していきます。

強い痛みが長い間ある場合は、痛み止めを処方してもらうなど医師に適切な対応をしてもらいましょう。

神経痛

手術では、神経の圧迫を取り除くために神経周辺の組織を切開する場合があります。術中は神経が刺激され、術後もしびれや焼けるような痛みなどの症状が発生することがあります。

神経痛も通常は時間の経過ととも自然に治りますが、神経の損傷が大きければ、長期間にわたって痛みやしびれが継続することもあります。

筋膜性疼痛

手術後は、背骨周辺の筋肉が緊張して硬くなってしまいます。これは筋肉痛を引き起こす原因となります。通常の筋肉痛はマッサージ等で良くなる場合がありますが、手術後の筋膜性疼痛はマッサージなどを避けた方が良いです。痛みが長い間継続している場合は医師に診てもらいましょう。

関節の痛み

手術の影響で、腰や足の関節に負担がかかり、痛みが出ることもあります。腰を捻った時や長時間立つ時に痛みが悪化して、安静にすれば痛みが緩和してくるのが特徴です。

上記のような後遺症は時間とともに改善していきますが、長引いたり悪化したりする場合は再手術が必要になることもあります。

当院の治療

当院は、脊柱管狭窄症に対してフローレンス法とセルゲル法を行っております。

いずれも低侵襲で身体の負担が少ない施術です。脊椎固定術等の全身麻酔で行われる外科的手術を避けたい患者様にお勧めしています。

フローレンス法

フローレンス法は、脊柱管狭窄症に対して行える、リスクの少ない低侵襲治療です。

部分麻酔と鎮静下で経皮的にスペーサーを挿入して、狭くなった脊柱管を広げます。治療後は取り外しなども可能です。

Lobsterスペーサーを入れることで脊柱の回旋や屈曲を維持しながら、椎体の安定化を図り、脊柱管を広げて、椎間板の突出を抑えて黄色靭帯肥厚を軽減できます。狭くなっていた脊柱管が広がることにより、痛みが解消されます。

セルゲル法

脊柱管狭窄症は、椎間板がひび割れることで中心成分が飛び出し、その飛び出した部分が脊柱管を狭くすることで起こります。椎間板のひび割れは修復できていなければ、再度ヘルニアが発生したり、再度脊柱管が狭くなったりしてしまう可能性があります。

当院のセルゲル法では、椎間板のひび割れ部分を埋める薬剤を注射し、それがゲル状になってひび割れを補綴するため、根本的な治療を行うことができます。椎間板のボリュームが減少することがなく、治療後に薬剤がゲル状のインプラントとして椎間板に残りますので、椎間板が温存されることが特徴です。

脊柱管狭窄症と診断されたことのある方は、是非一度当院での診察を受けることをご検討ください。

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