脊柱管狭窄症は背骨の中にある神経の通り道(=脊柱管)が狭くなった状態です。
脊柱管狭窄症が狭くなると、神経が圧迫され、腰から下肢まで痛みやしびれが発生します。歩く時に臀部や下肢に痛み・しびれが生じ、休むと楽になるという間欠性跛行は脊柱管狭窄症の特徴的な症状です。
症状が強ければ強いほど、手術が検討されますが、今回は手術がどのように行われているかについて解説します。
脊柱管狭窄症の手術
外科的手術
脊柱管狭窄症の最も一般的な手術は、腰椎椎弓切除術と脊椎固定術です。
腰椎椎弓切除術
内視鏡を使用して行われる手術です。全身麻酔にて、背部を18~20mm程皮膚を切開し、内視鏡の管を通してから、椎弓の一部や肥厚した黄色靭帯を切除することにより神経の圧迫を取り除き、脊柱管を広げます。
すべり症や椎間孔狭窄症もある場合は、切除術が行われた後に固定術が必要となることがあります。
脊椎固定術
内視鏡とX線透視装置を使用して、背骨を固定する手術です。全身麻酔にて、背部の皮膚を切開し、変性した椎間板を取り除いて、腰骨から採取した骨を詰めたケージという人工物を入れて、脊椎を整形します。その後、スクリューとロッドで椎骨を固定します。
固定術は、腰椎すべり症や不安定症などを伴う場合に適応されます。
日帰り施術:フローレンス法・Qフローレンス法
フローレンス法とQフローレンス法は、脊柱管狭窄症に対して行える、リスクの少ない低侵襲治療です。
部分麻酔と鎮静下で経皮的にデバイスを挿入して、狭くなった脊柱管を広げます。
デバイスを入れることで脊柱の回旋や屈曲を維持しながら、椎体の安定化を図り、脊柱管を広げて、椎間板の突出を抑えて黄色靭帯肥厚を軽減できます。狭くなっていた脊柱管が広がることにより、痛みが解消されます。
現在は、フローレンス法とQフローレンス法が当院のみで行われています。
手術の流れ
準備
手術の種類によっては違ったりしますが、まずは術前からの準備が必要です。
患者が服用中の薬によっては手術に影響を与えるものもありますので、事前に医師や看護師により確認されます。手術に影響を与えるような薬の休薬が依頼されます。
たばこや飲酒も手術に影響を与えますので、リスクを減らすために術前から控えるように頼まれます。
麻酔
手術当日となったら、看護師は体温、血圧、SPO2を図ります。
手術室に入ったら、麻酔科医が麻酔をします。
従来の外科的手術(椎弓切除術、固定術)は全身麻酔で行われています。麻酔薬により、手術中に患者の意識を取り除くことになります。全身麻酔中は呼吸が弱くなりますので、人工呼吸も行われます。
フローレンス法やQフローレンス法の低侵襲施術は、局所麻酔+鎮静下で行われます。意識が保ったままで、リスクが少なく、後遺症もほとんどありません。
手術自体
従来の外科的手術も、フローレンス法・Qフローレンス法も、背部の切開から始まります。ただし、椎弓切除術や固定術の場合は切開が2~3㎝(これ以上の場合もある)ですが、フローレンス法・Qフローレンス法は1~2㎝程度です。
背部を切開した後は、外科的手術(椎弓切除術、固定術)の場合は、筋肉を展開したり、靭帯や背骨を削ったりスクリューとロッドで固定したりします。
他方、フローレンス法・Qフローレンス法の場合は、専用器具を使用することで、靭帯を温存したままでデバイスを挿入します。黄色靭帯や棘上靭帯など腰椎を安定化させる靭帯を切除しないため、施術後はデバイスがずれたり、背骨が不安定になったりすることを防げます。
手術の最後に外科的手術でも低侵襲施術でも、皮膚を縫合します。
椎弓切除術や脊椎固定術の手術時間は1~2時間程度で、フローレンス法・Qフローレンス法は30分程度です。
術後
手術自体が終わったら、患者が麻酔から覚めて、病室にて安静します。
椎弓切除術や脊椎固定術の場合は、入院期間が1~2週間必要ですが、フローレンス法・Qフローレンス法の場合は術後2~3時間程安静にしていただいた後、当日に歩いて帰れます。
脊柱管狭窄症と診断されたことのある方は、一度当院での診察を受けることをご検討ください。